文理分断が続くのは「受験戦争」のせい 田中愛治・早大総長/下[毎日新聞より]♪
ジャーナリストの田原総一朗さんが各界のキーパーソンに「日本の教育の何が問題か」をテーマにインタビューする企画の初回は、「私学の雄」とされる早稲田大学の総長、田中愛治さんです。インタビューの後半では、田中さんが引き続き「受験戦争」の問題点を指摘し、話題は日本の教育予算の少なさや文系・理系教育の融合などにも及んでいきます。
上手に教育施策を打てば内閣支持率は上がる
田原 既得権益があって教育が変わらないと。
田中 物事を変えるのはすごく努力やエネルギーが必要です。やったことがないことをやるのは、うまくいくかどうかわからないので怖いのです。有名校に多くの進学実績があることで評価を得ている中学や高校で、学校も先生も安泰なのに、それを変えて立場が危うくなるようなことはしたくはないでしょう。これまでのやり方にしがみつきたくなります。
田原 先生たちは成功体験があるから、考え方を変えようとは思わない。
田中 学校の先生たちは、学校の成績が良かった人が多い。これまでの成功体験があるから「1点でも多く点を取る」という仕組みを変えようと思いません。大学でも多くの教員が「自分たちが標準とする問題を解くのが苦手な学生は、能力が低い」と思ってしまっている。ゆがんだエリート意識がある限り、教育は変えられないでしょう。
田原 日本の教育予算の少なさも問題だと思う。国内総生産(GDP)に占める公的教育費の割合は、経済協力開発機構(OECD)の加盟国で、最低水準にある。国民の多くは教育に関心を寄せているのに、なぜ政府はもっと予算をつけないのか。
田中 教育にかける予算が少なすぎるのは、政治家から「教育は票にならない」と思われているからです。特定の業界団体のように組織票になるものには予算がつきます。だが、小中高校や大学にいくらお金を出しても、先生や教授が投票してくれるとは限らないから予算があまりつきません。
政治家に考えてほしいのは、児童手当のように子育て世帯にお金をばらまくような安易な施策では、有権者の評価は得られないということです。学校の先生の負担を減らす、悩みを持つお子さんたちが相談できるカウンセラー制度を作る、親御さんの不満に対応する人を学校に置くなどの個別具体的な仕組みを打ち出せばいい。そこにお金をかけた時に、初めて有権者は「この政党の人たちは、教育に真剣に取り組んでいるのかな」と考えてくれるようになるのです。
:<以降は有料会員登録が必要>
:
【毎日新聞 2023/6/22 06:00(最終更新 6/22 11:21) 有料記事】
<< 鹿児島市の英会話スクール CGC (Cross Globe Community) >>